大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和25(れ)137 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人榊純義上告趣意第一、二点について。

しかし、原判決がその第一事実として確定判示した事実によれば、被告人はA及

びその仲間多数と出逢つて同人等に取り囲まれた上、A等に殴打されたので被告人

が現場に赴くに当りB等と喧嘩となつた場合の用意に持つていつた海軍ナイフを咄

嵯にズボンポケツトから取り出し、Aの左胸腹界部を突き刺したというのであるか

ら原判決は被告人の所為を喧嘩闘争の際の単なる攻撃防禦に外ならぬものであつて、

所論のように急迫不正の侵害に対して自己の権利を防衛する為め已むことを得ざる

に出でた行為と認定していないのである。されば原判決が被告人に刑法二〇五条一

項を適用して処断したからといつて法令の適用を誤つたものとはいえないし、理由

齟齬の違法をあえてしているものともいうことができない。所論はいずれも判示に

副わない事実を独断前提して原判決の擬律を非難し理由齟齬の違法を主張するもの

であつて、結局事実審たる原裁判所の事実認定を不当とするものであるから上告適

法の理由とならぬ。

同第三点について。

しかし、所論に摘録する被告人の供述は単に殺意なきことを強調するにとどまる

ものであり、他に所論正当防衛の主張に当る被告人の供述も弁護人の弁論も記録上

これを認めることができない。されば原審が所論正当防衛の点について何等判示す

るところがないからといつて原判決には所論の刑訴規定に違反する違法は存しない。

論旨は理由がない。

よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

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検察官 安平政吉関与

昭和二五年五月一八日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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